聖地巡礼!?

先日の記事、「旧豊後森機関庫・転車台の撮影」の続きです。
なかなか面白い出会いがありました。

ななつ星と機関庫

撮影当日は、JR九州が誇る「ななつ星」が豊後森駅に停車する日でした。
この「ななつ星」を一目見ようと停車する日時を楽しみにしている地元の人も結構多いんです。
公園には、ガイドさんの話に耳を傾けている多国籍な一団が転車台の周りにいました。
めずらしいなあと思って撮影準備を始めていると、遺跡見学を終えたアジア系の女性に準備していたドローンを指差してCan I see it?と声をかけられました。
もちろんYesと答えましたが、これで何を撮っているのかと質問されましたが、咄嗟には英単語すら出て来ません。
「機関庫」の方と「ななつ星」の方を指さすと、自分たちは、その乗客だということと乗っている客車番号を教えてくれました。
「出発したら撮ってね。」と言われたので、OK!と答えました。
この時ばかりは、外国語の意味がわかっても、発話できないもどかしさを痛感いたしました…。
さて、発車したら動画にて撮影しましたが、残念ながら車窓からこちら側を見ている乗客は確認できませんでした。

豊後森機関庫公園より豊後森機関庫公園よりななつ星をドローンにて撮影。

聖地巡礼

聖地巡礼などと書くと村上春樹氏の小説を私は連想してしまいますが…。

実は「ななつ星」の到着を楽しみにしているのは、地元の方だけではありません。鉄道好きの人たちにとってもここは穴場スポットなのです。機関庫公園は豊後森駅の隣にあり、鉄道史に残る貴重な歴史的遺産な訳ですから、この機関庫の景観と「ななつ星」をセットのアングルで写真に収めたいとは誰しも思うのではないかと思います。

私たちの撮影目的は機関庫でしたが、もちろん「ななつ星」の発着予定時刻も調べていました。機関庫の撮影を終えたあと、「ななつ星」が発車する様子を空から動画で撮影できればいいなと考えていました。列車に合わせてドローンを回転させれば、機関庫も丁度収まる寸法です。

発車十五分ほど前になると、カメラを手にした20歳前後くらいの青年の一団が各々撮影スタンバイし始めました。
私たちもドローンを一度上に飛ばして、アングルの確認を行っていると、それを見ていたその一団の子達が、ドローンの免許があるとかないとかの話をしているのが聞こえて来ました。
そうこうするうちに、「ななつ星」が豊後森駅を発車したので、一同無言で列車にカメラを向けて自分の思いのままシャッターを切っていました。私たちも、滞空させておいたドローンをワインレッドの車両に向けて追いかけるようにして撮影しました。

アングルから列車が見えなくなったあと、ドローンを目の上くらいまで下ろしてハンドキャッチすると、その一団のこの一人が「おぅ、すごい。会社さんで飛ばしているんですか?この辺りでいい撮影スポットありますか?」(ドローンに会社名を入れています)と話しかけてくれました。
「そうです。空撮の会社をやっています。」と話し始めたら、周りの仲間たちも集まって来ました。
話は先ほど耳にした免許などの話になり、「今は飛ばせるところと飛ばせないところがあって、今日の撮影は、玖珠町さんの方へ施設使用許可の申請をしたんだよ。」という話をすると、「へぇ。そうなんだ。」とみなさん納得したようでした。
彼らのうちの一人が、「沼津でも撮影は難しくなって…。聖地は特に…。」と話始めました。(彼の言う撮影は普通のカメラの撮影のことだと思われます。)
私「??。沼津?聖地?」「静岡県の沼津市のこと?そこにドローンの勉強をしに行ったんだよ。聖地って!?」というと、「ラブライブって知ってます?…(以下省略)」
どうも、彼らは、「ラブライブ!」というアニメに出てくる重要な場所(実在するらしい)のことを聖地といい、そこを巡礼しているとのこと。その一環で、豊後森機関庫へ詣でた次第ということでした。興味をそそられた私は、「みんなどこから来たの?」と改めて訊くと、「僕は愛知から。」「僕は岐阜。」とそれぞれ全く予想外なところでしたのでとても驚きました。どうりで撮影のスポットを聞くわけだと思いながら、「それで、アニメに豊後森機関庫も使われているの?」と聞くと、一同「ラブライブ サンシャイン」と答えてくれました。(この一連のやりとりと流れは創作ではありません。笑)
その他詳しいことを話してくれたのですが、アニメの内容のことがわからなくてついていけませんでした。

沼津や三島という地名に懐かしさを覚えながら、「九州を楽しんでください」と言って彼らと別れました。
皆、好きなことにまっすぐな感じが伝わって来て、こだわりがあっても嫌味がなく、純朴で好感が持てる子達でした。
私もこんな出会いがあるとは思ってもみなかったので、なんとも言えないあたたかな満足感がありました。
人と人との交流っていいですね。

再発見?

そんなこんなで撮影は終了したわけですが、先ほどの満足感の理由を考えてみると、自分の知らないことを交流を通して教わったということがあると思います。

地元の文化財であることは知っていましたし、もともとその雰囲気ある佇まいをドローンで空から撮影してみたいと考えていました。
しかし、「ななつ星」の乗客が停車中機関庫を見学することは知りませんでしたし、しっかりと説明を受けていることも知りませんでした。
また、アニメで機関庫がフューチュアされていることも知りませんでした。
観光客の方々との出会いがなければ、人気スポットであることは実感してもその理由までを知ることはできなかったと思われます。

地域の魅力を皆様に知ってもらうための撮影であるのに、逆に教わることの多い撮影になりました。
もしかすると、価値の再発見なんてそういう逆説的なものなのかもしれません。


Special thanks to:
玖珠町役場
Link to:
ななつ星 in 九州

機関庫が登場。
「ラブライブ!サンシャイン‼︎」の架空のスクールアイドルグループAqours(アクア)の3rdシングル。
「Happy Happy Train」のPV映像。