ドローンを初めて飛行させる前に

はじめに

今やだれもが簡単に高性能なドローンを購入できる時代になりました。
家電量販店から持ち帰って、あるいはAmazonの段ボールを開けて、バッテリーを充電すれば、もう午後には離陸させることができます。
TIME電子版に動画付きの良い記事がありましたのでご紹介します。
ドローンを購入した方は、はやる心を抑えて先ずはこの動画を見て安全飛行に関する理解を深めましょう。
飛行させるのはそれからでも遅くはないと思います。

ドローンは簡単に飛ばせるが簡単に墜落する



どうでしょうか。
ある意味、「決定的瞬間」集ですね。
失笑を禁じ得ない場面も多々ありますが…。
安定飛行を謳う高性能ドローンが皮肉にもその危険性を自ら記録しているのですから、これ以上説得力のある証拠はありません。
この動画には、安定飛行しているドローンが容易く墜落する様子が記録されています。

万一、上空を飛行するドローンが人や物の上に墜落したら大惨事は免れません。
これらを防止するためにドローンの飛行は法令によって厳しく規制されています。
人口の密集した地域や夜間飛行、目視外飛行等、規制の対象範囲内における飛行を行うには、国土交通省による許可・承認が必要になります。
動画を見る限りではFPV(First Person's View=モニターにリアルタイムで伝送された画像のみを頼りに目視外で飛行させること)で飛行させていることによる視野不足が主原因であるように思われますが、こんなにも容易く墜落することが分かれば、購入後すぐに飛行させることはができるとしても、少なくとも飛行に関して慎重さを必要とすることが理解できるのではないかと思います。

“Even if drones have all sorts of high-tech features designed to keep them airborne, they aren’t impervious to the constant pull of earth’s gravity, the branches of an unseen tree, or even the grasp of a curious animal.”
「ドローンが離陸状態を保つためのあらゆる技術を備えていても、重力や、死角にある樹の枝々、動物の好奇心旺盛な所作でさえも、その飛行への影響を免れ得ない。」
-TIME "Drones Are Easy to Fly. But These Videos Prove They're Also Easy to Crash"

記事には、操縦者が心に留めるべき公理が述べられているように思われます。
それは、如何に高性能な危険回避機能が搭載されていようとも、「ドローンは重力の影響をはじめとする墜落の可能性を完全に除外することはできない」ということです。
言い換えれば、「常に墜落する可能性を搭載して飛行している」ということです。
この法則は、飛行機やヘリコプターの墜落事故を考えれば常識といえるものですが、ビギナーや飛行経験がない人ほど軽視しがちのことです。

実際のところ、ギャラリーがビギナーを煽って無理した飛行をさせ墜落…ということは全くないことではありません。(ギャラリーとは不意の見学者も含みます)
この場合、責任の所在は、ギャラリーよりも寧ろ飛行させた操縦者にあります。
物珍しいわけですし、ギャラリーがドローンに過度な期待を抱くのは一般的に無理からぬことです。
そして、ギャラリーは身体感覚でその飛行が危険か否かを判断することはできても、ドローンの安全管理上必要な飛行制限等を判断することはできません。
徐々にギャラリーの期待は高まっていき、結果として操縦者が煽られていく課程は容易に想像できます。
また、慣れていない場合、ギャラリーの存在は操縦者の意識に強く影響を及ぼし興奮状態を作りますので、危険予測は等閑になり、着陸させるという選択肢も浮かばなくなるほどのパニックに陥いるということも考えられます。
この問題の本質は、操縦者が客観的な安全計画を立てずに飛行させたことにあると思われます。

安全な飛行のために

墜落の回避には、知識、技術、安全管理の総合的なマネジメントが不可欠です。
操縦技術に起因する墜落は多いように思えますが、多くの場合、無理な操縦によるロスト(機体喪失)や接触が原因です。
言うまでもなく、これは操縦技術を軽視しているわけではなく、自身の技量や機体の性能を客観的に把握すること。そして、その範囲内で飛行させることの重要性を意味しています。
この動画を見れば、安全飛行には何が必要かと自問せざるを得ないでしょう。(記事中では技能向上の認識と練習の必要性が提起されています)

まとめ

1. 高性能ドローンは簡単に入手できる
2. 高性能でもドローンの飛行は常に墜落の危険性を伴う
3. ドローンの飛行は法令によって規制されている
4. 飛行させるには安全への意識と取り組みが必要
 4-1. 法令の理解
  4-1-1. 航空法
  4-1-2. 電波法
  4-1-3. 道路交通法
  4-1-4. 民法
  4-1-5. 個人情報保護法
  4-1-6. その他法律
 4-2. 飛行に関する各種条件の理解
  4-2-1. 気象学
  4-2-2. 電磁波
 4-3. 操縦技術の練習
 4-4. 安全体制の整備
  4-4-1. 飛行前のチェックリスト
  4-4-2. 緊急連絡体制

知識と技術は一体です。
確かに学ぶべきことのなかには法令等があり、個人にとっては、少しハードルが高いように感じられるかもしれません。
その場合には、ドローンの検定等の受験も良い一手だと思います。また、ドローンスクールの受講も大いに役立つと思われます。
スクールによっては、飛行させるのに必要なベーシックなカリキュラムに加えて、独自のユニークなカリキュラムを用意してあるところもあり、それらを応用した産業用途につながる技術や方法を指導してくれるところもあります。

ドローンを手に取り外出するのは、これらの検定やスクールを利用するなどして、安全な飛行に必要な知識と技術を身につけてからでも決して遅くはないのではないでしょうか。
安全に飛行させることは、結果として有意義なドローンライフにつながることでしょう。

<参考記事>
-TIME "Drones Are Easy to Fly. But These Videos Prove They're Also Easy to Crash"
http://time.com/5287617/drone-crash-videos/