県指定天然記念物「野平のミツガシワ自生地」及び周辺森林の空撮
去る7月22日に大分県玖珠町で県の天然記念物に指定されている「野平のミツガシワ自生地」及び周辺森林を大分県立日田高等学校科学部のご依頼により撮影協力させて頂きました。
好奇心旺盛な生徒の皆さんと熱意溢れる科学部担当教諭の先生とともに楽しいひと時を過ごすことができました。
とりわけ自然に対して示す高校生の新鮮な反応の一つ一つがとても輝いていて心底感動しました。
今回の撮影を通して、私たち撮影スタッフもこの地域のミツガシワが大変貴重なことを知ることができ、環境保全の大切さに改めて気づかされることとなりました。
折しも、異常気象による猛暑まっ最中ということもあり、色々と意義深い撮影でした。
このような撮影に協力することができ大変光栄に思います。
ミツガシワとは
みなさんはミツガシワという植物のことをご存知でしょうか?
恥ずかしながら、私はこの撮影に関わるまで知りませんでした。
一般的に知っている人は少ないように思います。
“ミツガシワ(三槲、Menyanthes trifoliata)はミツガシワ科ミツガシワ属の一属一種の多年草。日本を含め北半球の主として寒冷地に分布し、湿地や浅い水中に生える。
地下茎を横に伸ばして広がる。葉は複葉で3小葉からなる。4-5月に白い花を総状花序に多数つける。
亜寒帯や高山に多いが、京都市の深泥池や東京都練馬区の三宝寺池など暖帯の一部にも孤立的に自生している。これらは氷河期の生き残り(残存植物)と考えられ、これらを含む水生植物群落は天然記念物に指定されている。北海道岩内郡共和町の町の花。
睡菜(スイサイ)と称し苦味健胃薬として用いる。”
-「ミツガシワ」, 『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』, 更新日時: 2016年1月24日 13:10 (UTC)
https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%83%9F%E3%83%84%E3%82%AC%E3%82%B7%E3%83%AF&oldid=58361417
- Image1, 2007.06.02Qwert1234.会津若松市湊町
- Image2, ミツガシワ02_Menyanthes_trifoliata.JPG, Qwert1234's file, 2008.05.11, Qwert1234
氷河期の残存植物ということなので、標高の高いところにまれに点在しているということなのでしょうか。
九州では福岡県、佐賀県、大分県に分布しており、県内ではほかに九重火山群にも確認されているそうです。
まるで植物界における「生きた化石」だといえるかも知れません。
野平のミツガシワ
“野平のミツガシワは、標高五百mのなだらかな丘陵上の湿地に群生している。(中略)野平のミツガシワ自生地は、その周辺の湿地植物とともに西日本の潜在する湿地植物社会の指標となる学術上きわめて貴重な自生地である。”
-野平のミツガシワ, 玖珠町ホームページ
http://www.town.kusu.oita.jp/272.html
日田市隣接の地域であるにもかかわらず、マップコードを入力したカーナビを頼りにリスクアセスメントを兼ねたロケハンに行きました。
近隣にこんな長閑で緑が美しいところがあるとは知りませんでした。
そういえば、飛行計画作成時に国土地理院の地図に、この辺りは標高500mとあったなと思い出しながら、途上の一尺八寸山の登山道入口を過ぎ、目的地に到着しました。
ちなみに、一尺八寸山とは、日本異様難読山名コンテストで難読山名日本一になった山だそうで標高706.7m、日田市と中津市の境に位置しています。
ミツガシワから脱線していますが、一尺八寸山を読めますか?(記事の最後に答えを載せてます)
加えて、日田市には難読山名第三位の月出山岳という山もあるそうです。(こちらも記事の最後に答えを載せてます)
さて、その一尺八寸山の麓の集落の一つに野平のミツガシワ自生地があります。
自生地は獣類の侵入を防ぐため保護ネットで囲まれています。
現地に到着した際、保護ネットのおかげでここが自生地であることは分かったのですが、なにがその貴重な天然記念物か判然としませんでした。
幸いにも、管理している地権者の方が、大変丁寧に教えて下さいました。
お話によると、もともと大きい植物ではなく、小さくてお米の花のような美しく白い花を付けるが、それは、春の終わり、四月の後半の数週間のみ。しかも、花をつけても、標高が高く、まだ朝方は寒い春のことで霜がその花弁に付けばすぐに萎れ一日で駄目になってしまうということでした。
大変もの儚い花弁の付け方をする華奢な花のようです。
よって、地元の方々もそうそう拝めるものではないということでした。
私が見たのは、青々とした三つ葉をつけた高さ15cm位の茎葉でした。
その他にも、鹿や猪の侵入により葉っぱが食べられてしまうこと、不思議なことに冬から春にかけてはミツガシワ以外の植物は枯れることなどを教わりました。
この点は、氷河期の残存植物である遺伝子的な特徴によるのかも知れません。
また、ミツガシワは水質や水温のためなのか同湿地内でも偏在しているそうです。
ドローンによる撮影の目的は、湿地全体を俯瞰し全貌をつかみ、湿地に流れる水源を育む周辺の広葉樹林との位置的関連性を収めることでした。
俯瞰してみると、湿地のなかの水路がうっすらと浮かび上がっていることが確認されます。
先生がしっかりとした撮影イメージをお持ちでいらしたので、撮影は終始スムースに運びました。
事前のロケハンでミツガシワ自生地やその生育環境について教えていただいたことが撮影にも活かされたと思います。
今回の撮影では、その対象物への理解も重要な要素であることに改めて気づかされました。
そして、環境保全の研究を日田高校の生徒と先生とが熱意をもって取り組まれていることに大変感銘を受けました。
このような取り組みが継続され、その成果が「野平のミツガシワ自生地」の保存に役立つことを期待しています。
なお、「野平のミツガシワ自生地」は、通常撮影に関してはフォトスポットとして一般公開されています。
興味のある方は、カメラを片手に春の朝早く出かけてみるのはいかがでしょうか。
保護ネット内には入れませんが、十分に観測や撮影が可能だと思われます。
春霞たちこめるなかに幻想的な花をつけたミツガシワの写真を撮影することができるかも知れません。
改めて、大変貴重な撮影経験になりました。
関係者のみなさま、ありがとうございました。
*ミツガシワが県指定天然記念物であることから、撮影にあたっては、地元地権者並びに玖珠町教育委員会に撮影の許可を頂いております。
A1: 一尺八寸山(ミオウヤマ、ミオヤマ)
A2: 月出山岳(カントウダケ)
〈引用文献〉
玖珠町 - 野平のミツガシワ
http://www.town.kusu.oita.jp/272.html
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